フォーミュラリとは、「疾患の診断、予防、治療や健康増進に対して、医師を始めとする薬剤師・他の医療従事者による臨床的な判断を表すために必要な、継続的にアップデートされる薬のリストと関連情報」(Am J Health-Syst Pharm 2008;65:1272-83)と定義されています。
医療機関ごとに「病院フォーミュラリ」と呼ばれる採用医薬品リストや関連情報が活用されています。地域の関係者が協力し、地域レベルでフォーミュラリを作成し、運用している事例も見られるようになってきています。
地域フォーミュラリの基本的な考え方や運用方法についてまとめられた文書が、2023年7月7日付で厚生労働省から各都道府県などに通知されました。「地域フォーミュラリ」とは、「地域の医師、薬剤師などの医療従事者とその関係団体の協働により、有効性、安全性に加えて、経済性なども含めて総合的な観点から最適であると判断された医薬品が収載されている地域における医薬品集及びその使用方針」と定義されました。
フォーミュラリは、第四期医療費適正化計画の中で、後発医薬品の使用促進や医薬品の適正使用を促す医療の効率的な提供への貢献が明確に位置づけられています。実効性をより高めるためには、保険者や医療関係者と方向性を共有し、連携できる体制を都道府県が構築することが求められています。
骨太の方針に地域フォーミュラリの全国展開
2025年6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針)は、人口減少と物価上昇という日本の課題に対し、賃上げの実現と持続可能な経済社会の構築を目指しています。特に、持続可能な社会保障制度の実現と現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減のため、「地域フォーミュラリの全国展開」が盛り込まれました。創薬力強化とイノベーション推進の欄にも「医薬品の適正使用や後発医薬品の使用促進のみならず、医療費適正化の観点から地域フォーミュラリを普及する」と明記されました。
地域フォーミュラリの推進は、地域医療の質向上と医療費適正化を両立させるための鍵となるでしょう。
フォーミュラリ作成の基本的な考え方・作成プロセス
(2023年7月7日厚生労働省フォーミュラリ運用の通知より抜粋)
フォーミュラリの対象とする医薬品は、同種同効薬が多数存在する疾患領域の
医薬品を中心に考えます。後発医薬品(バイオ後続品を含む)があるもの等。
- 目的: 患者に良質な薬物療法を提供すること。
- 作成・運用:最新の科学的エビデンスに基づく。医学的・薬学的観点に加え、経済性も考慮。地域の関係者の協働の下で作成・運用される。
- 内容:疾患領域等に応じて使用される医薬品を示す。
- 活用:医薬品の使用(処方)を制限するものではない。医学的・薬学的な理由で必要と判断される場合は、リスト外の医薬品も使用可能。診療ガイドラインを参照しつつ、フォーミュラリも活用することで、個々の患者に最適な薬物療法が提供される。
~作成主体の参考事例~



<フォーミュラリ作成のポイント>


新薬や後発品の発売
ガイドラインの改定等

新薬や後発品の発売
ガイドラインの改定等

<診療ガイドラインとフォーミュラリとの関係>
【理想】

【不都合】
